夕凪の街 桜の国 / こうの史代
2008年08月06日
明日は、原子爆弾が投下されて63回目の8月6日だ。
そういうタイミングもあって、『夕凪の街 桜の国 』を読み返した。若くして原爆被災者となった女性と、その姪が主人公の2編の連作だ。最近、これを原作に映画も発表されている。
作家のこうの史代さんは広島生まれなのだそうだが、原爆というテーマを描くこと自体、この作品を書くまで避け続けてきたらしい。身近にあるがゆえに、安易に触れることはできないと感じられたのかもしれない。だが、伝える役割を果たさなければならないという強い使命感から、この作品は生まれたのだ、ということがあとがきに書いてあった。
夕凪の街は、原爆投下10周年を迎えた広島のある街でのストーリー。主人公の皆実(歳はおそらく20代前半)のセリフを、回想シーンを中心に抜粋させてもらいます。
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ぜんたい
この街の人は
不自然だ誰もあのことを言わない
いまだにわけが わからないのだわかっているのは「死ねばいい」と
誰かに思われたということ
思われたのに生き延びているということそしていちばん怖いのは
あれ以来
本当にそう思われても仕方のない
人間にじぶんがなってしまったことに自分で時々
気づいてしまう
ことだ(中略)
あの橋を通ったのは八日のことだ
お父さんも見つからない妹の翠ちゃんも見つからない鼻がへんになりそうだ
川にぎっしり浮いた死体に霞姉ちゃんと煉瓦を投げつけたあれから十年
しあわせだと思うたび
美しいと思うたび愛しかった都市のすべてを
人のすべてを思い出しすべて失った日に
ひきずり戻されるおまえの住む世界は
ここではないと
誰かの声がする(中略)
・・・・・・
教えてくださいうちは
この世におっても
ええんじゃと
教えて下さい(中略)
嬉しい?
十年経ったけど
原爆を落とした人はわたしを見て
「やった!またひとり殺せた」
とちゃんと思うてくれとる?ひどいなぁ
てっきりわたしは
死なずにすんだ人
かと思ったのにあぁ 風・・・・・・
夕凪が終わったんかねぇ
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驚いた。そして、とても悲しい気持ちになった。
原爆の悲惨さを訴えるだけではなく、憎しみや抗議の気持ちを振り上げるでもなく・・・
うぅ、ほんとになんと言ってよいやら分かりません。
続く、『桜の国(一)(二)』は舞台を東京に移し、皆実の姪である七波が主人公となる。主に被爆二世と被爆者差別を扱った物語。『夕凪の街』とも緩やかに繋がりながら物語が進んでゆく。(『夕凪の街』の方で、引用しすぎた感があり、実際に読んでもらわないと僕のつたない文章では何も伝わらなさそうなので、こっちはこれだけにしておこぅ)
ハードで重いテーマを扱ってはいるけれども、絵はとてもやわらかく、読み心地のよい漫画だった。ここまで読んでくださった人、機会があれば是非読んでみてください!
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